
じゃっぱ汁 — 青森のタラのあら味噌汁
寒さが本格化する11月から翌年2月にかけて、青森の漁師町の台所では必ずといっていいほどこの汁が登場します。「じゃっぱ」は津軽弁で魚のあら(頭・骨・内臓)を指す言葉です。豊漁のタラをひとつも無駄にしまいとした浜の暮らしから生まれた、骨の旨みがぎっしり詰まった一杯です。
由来・特徴
青森県の津軽湾や陸奥湾では、冬になると真ダラが大量に水揚げされます。切り身や干物として売られる身の部分を落とした後に残るのが「じゃっぱ」です。漁師や浜辺の家庭では、それを毎朝のように味噌汁にして食べてきました。捨てるものなど何もない、浜の台所の知恵です。骨のまわりにとろりとした旨みが詰まっており、身だけを使うよりもずっと深い味わいになります。
タラの頭にはほお肉があり、目の周りにもしっかり身が残っています。中骨のまわりも食べごたえがある。白子(たちこ)や肝臓を加えると、汁全体にとろみとコクが一段と増します。地域や家庭によって加える具材は微妙に違いますが、大根・豆腐・長ねぎという組み合わせはほぼ共通しています。あら自体から旨みが十分に出るため、水だけで煮てもしっかりした汁になります。
「じゃっぱ汁」という名は青森県以外ではあまり聞かれませんが、タラのあらを使った汁は三陸沿岸や道南にも似たものがあります。それだけ、タラは寒冷な海に生きる人々の食卓に根付いてきた魚です。青森の家庭では「タラ汁」と呼ぶこともあり、呼び名は違っても、あらをまるごと活かす精神は変わりません。
材料(4人分)
- 真ダラのあら(頭・中骨・かま) 600〜700g
- タラの白子(たちこ)または肝臓 100g(あれば)
- 大根 150g
- 木綿豆腐 1丁(約300g)
- 長ねぎ 2本
- 生姜 1かけ(薄切り)
- 水 1200ml
- 酒 大さじ2
- 米みそ(または津軽みそ) 大さじ4〜5
- 塩 適量(下処理用)
- 七味唐辛子 お好みで
作り方
- タラのあらは食べやすい大きさに切り分ける。バットに並べて塩をたっぷりふり、15分ほどおいて臭みを引き出す。
- 水でさっと洗い流してから、ザルに入れて熱湯を回しかける(霜降り)。すぐに冷水に取り、血合いや黒いぬめり、残ったウロコを指で丁寧に取り除く。ここを丁寧にやると仕上がりが格段に違う。
- 白子または肝臓がある場合は一口大に切り、薄い塩水に5〜10分さらしてから水気をよく切っておく。
- 大根は5mm厚さのいちょう切り、豆腐は2〜3cm角、長ねぎは斜め薄切りにする。
- 鍋に水と生姜の薄切りを入れて中火にかける。沸いたら酒を加え、霜降りしたタラのあらを入れる。再び沸いてきたら火を弱め、アクをこまめにすくいながら15〜20分静かに煮る。
- 大根を加えてさらに7〜8分、竹串がすっと通るまで煮る。豆腐・長ねぎを加え、ひと煮立ちしたら火を弱める。白子または肝臓があればここで加え、2〜3分で色が変わったら次へ進む。
- みそをお玉に取り、汁を少し加えながら丁寧に溶く。鍋に加えて沸かさないよう温め、味を見て塩で調える。お椀に盛り、お好みで七味唐辛子を振りかける。
コツ・ポイント
- 霜降りは必ず行う。省くと臭みが汁全体に広がってしまう。熱湯をかけた後に冷水でしっかり洗うことが肝心。
- 煮るときはぐつぐつ沸かし続けない。弱〜中火でじっくり旨みを引き出すと汁が澄んでくる。
- みそを溶き入れた後は加熱しすぎない。沸かすと香りと風味がとびやすい。
- 白子(たちこ)は加熱しすぎると固くなる。色が変わったらすぐに次の工程へ進む。
アレンジ・保存
里芋を大根と一緒に加えると、汁にほどよいとろみが出て体がよりあたたまります。油揚げを入れるのも青森ではよく見るアレンジです。白みそをブレンドすると甘みが増し、やわらかな口当たりになります。昆布を最初から入れて出汁を底上げする方法もあります。
残ったじゃっぱ汁は冷蔵庫で1〜2日保存できます。翌日は味がしっかり染みておいしくなります。ただし豆腐は崩れやすく水気も出てくるため、食べる分だけ作るか、豆腐だけ別にしておいて食べるときに加えるのがおすすめです。再加熱の際は、沸騰直前で止めるのを忘れずに。